PROJECT

叶えたいこと


ヤマカワタカヒロ LIVE YELL


Road to 日比谷野音(2019〜)


会いに行く(2017-18)

第10回

2018/12/22 タッチフット社会人女王決定戦「ファイナルタッチ」@横浜スタジアム


ずっと晴れていたのに、この日に限って雨だった。

真冬の雨は、冷たい。文字を読んで頭で想像するより、実際に打たれてみると、気持ちが落ち込むくらい冷たくて寒い。そんな日に、ファイナルタッチは開催された。

横浜スタジアムがドームだったら、結果はまた変わっていたかもしれない。しかしながら、残念ではあるけれど、横浜スタジアムはドームではなかったから、人工芝は濡れて滑り、ボールも濡れて滑るコンディションだった。


ファイナルタッチは、関東リーグ・関西リーグ、それぞれの1位と2位が出場し、準決勝からのトーナメントで、社会人チャンピオンを決める。そしてこの優勝チームが、1/3に東京ドームで開催される、大学生チャンピオンと女子タッチフット日本一を決定する「さくらボウル」に出場するのだ。昨年、ONEPACKはファイナルタッチを勝ち抜き、さくらボウルに出場した。三連覇中の神戸大学Rooksと戦い、6−39で完敗した。Rooksには、春のシュガーボウルでも何度も苦杯をなめさせられているが、さくらボウルもそのリベンジの場とはならなかった。そもそも昨年のファイナルタッチを勝ち抜いたこと自体、ONEPACKにとっては7年越しの悲願であり、決勝のRIOTS戦の25−23というスコアが、いかに厳しい戦いであったのかを物語っている。社会人チャンピンという称号自体、つかみとることが難しいタイトルなのだ。


冷たい雨が降る中、準決勝の試合が始まった。相手はそのRIOTS。キックオフ直後のシリーズでONEPACKは攻勢をしかけ、相手エンドゾーンまで押し込んだ。しかし、タッチダウン目前で凌ぎ切られ、攻守交代。勝負の世界に「たられば」はないが、ここでタッチダウンが取れていたら、というシーンだった。ここから流れが変わった。RIOTSにロングパスでのタッチダウンを許し、その後も失点が重なっていく。押し込まれる展開を根気よく凌ぎ、第3Qの後半から最終Qで追い上げを見せたものの、結果は20-26で惜敗。ONEPACKは決勝に届かなかった。一方RIOTSはそのまま決勝に勝利し、1/3さくらボウルの出場権を手にした。3位決定戦に回ったONEPACKは、US UNITEDを32-6で押し切り、全国3位で2018年のシーズンを終えた。


悔しかった。きっと、戦った選手たちはこんな僕の100倍は悔しいだろうと思う。彼女たちは、数え切れないほどの苦しさや悔しさを受け入れて走り、ピッチに立っている。試合後にスタンドにあいさつに来てくれた選手たちの表情は、凛々しく、清々しかった。本気で戦った人間にしか、ああいう表情は出せない。それを見て、僕は元気をもらう。勇気をもらう。

願わくば、僕のライブもそうでありたい。ステージを見て、歌を聴いて、笑顔や勇気が湧いてくるような、そんなアーティストでありたい。そして、僕のライブを見て笑顔になった人が、他の誰かの笑顔を勇気を湧き起こして、巡り巡って、また僕が笑顔と勇気をもらう。そんな「笑顔と勇気の輪」の一部になりたい。本当に好きなことを、悔いのないように本気でやる。それができれば、きっと「笑顔と勇気の輪」が広がっていく。


冷たい雨の中、全力で戦う選手たちの姿を見て、僕はそんなことを考えていた。


第9回

2018/12/15 こども福祉協会 B-power みんなの音楽祭~X‘masパーティー~@八王子エルシー


昨年に引き続き、こども福祉協会 B-power のクリスマスパーティー『みんなの音楽祭』に参加した。

今年は、10月と12月の本番直前、ダンスで参加する子どもたちのレッスンの見学に、児童養護施設に訪問もさせていただいた。サンバとヒップホップを融合させたダンス、レッスンに少し混ぜてもらって一緒に踊ったが、すごく楽しかった。短い期間の練習で振りを覚えていく子どもたちの吸収力は、すごいと改めて感じた。


本番当日は、下北沢LOFTでのマンスリーワンマンfinalとのダブルヘッダーだった。ワンマンで発表する新曲「頼らない」と、Respect Songsとしてカバーする「クリスマスソング(back number)」「僕が一番欲しかったもの(槇原敬之)」を含めた17曲と、『みんなの音楽祭』で歌う「世界で一つだけの花(SMAP/槇原敬之)」を含めた4曲の準備をして、朝から八王子に向かった。


会場入りして手短にマイク2本でボーカルとギターのサウンドチェックを済ませ、ランチがわりにパンをかじる。他の出演者のリハを見ながら、バタバタしながらも参加者みんなで楽しもうと準備をしている会場全体を見て、このイベントの温かさを改めて感じた。


12時半。続々と参加者が増え続ける中、イベントの幕開け。サンバ、キッズダンス、タヒチアンダンス、施設の子どもたちのファッションショーと続き、ヤマカワタカヒロも2曲ほど歌を届け、イベントは後半へ。一緒にスクールで習っている母娘チームによるダンス、そして最も楽しみにしていた、一緒にレッスンを受けた施設の子どもたちによるダンス。難しい振りにも関わらず、短期間のレッスンだったにも関わらず、彼女たちは最後まで精一杯パフォーマンスをしてくれた。嬉しかった。出来栄えどうこうじゃないステージというものが、世の中にはある。彼女たちのダンスは、僕にそれを改めて教えてくれた。


アミーズサンバの講師でもあるプロダンサーのアミさんによる圧巻のショー、そして、参加者全員で輪になって踊った「マルシャ八王子」と続き、イベントの最後は、クリスマスらしく、みんなで「赤鼻のトナカイ」と「サンタが街にやってくる」を歌った。昨年に引き続き、ギターで伴奏をさせていただき、子どもたちに囲まれて、とても幸せな時間を過ごすことができた。


このイベントは、親に頼れない施設の子たちと、ダンスを習っている母娘と、地域の方々と、誰もが混じり合って、交流している。No Border.本当に、心地よい空間だった。世の中がみんな、こうであればいい。違いになんて注目しなくていい。僕らは、ひとりひとり違う色と形と香りを持った花。違って当たり前だし、花であることに変わりはない。そこまで深く考えずに選曲した「世界に一つだけの花」だったけれど、この歌を選んで、正解だったと思った。


主催者の菅さんのご好意で、CDを置かせていただいた。帰り際、初めて僕の歌を聴いてくださった方々が「CDが欲しい」と声をかけてくださった。ひとり一人、握手をさせていただいたけれど、皆さん、本当に温かかった。僕が「応援したい」と思っているのと同じように、僕のことを「応援したい」と思ってくださる方がいる。そんな当たり前のことが、奇跡のように思う。


菅さんとは、こんなことを話した。

『音楽祭』なんだから、来年は歌をうたう子がいていいし、菅さんの歌も聴きたいし、子どもたちにステージで本気で歌う体験を提供したい。ステージで一生懸命歌った歌を、受け止めてもらえる経験を、子どもたちに届けてあげたい。

僕が歌う、だけではなくて、歌うことを僕が支援する、というのも、とてもワクワクするアイディアだ。それはきっと、自分が歌うだけでは味わえない、素敵な幸福感を僕にくれるだろう。


そんな胸の高鳴りを抱えたまま、僕は下北沢に向かった。


第8回

2018/11/04 タッチフット女子社会人関東予選リーグ最終戦@文京学院大学ふじみ野キャンパス第二グラウンド


1/3の東京ドームでの「さくらボウル」を見て、タッチフットボールの女子クラブチーム「ONEPACK」を応援する、と宣言しておきながら、春のリーグ戦応援には行けなかった。秋の予選リーグも第1、2戦を欠席してしまい、ようやく応援に行くことができたのが、もう秋も終わる11月の予選リーグ最終戦だった。


こんなことじゃ本当にいけないなと思いながら、グランドに向かうバスに揺られながら、やっと間近で見ることができるタッチフットの試合に、胸を躍らせていた。ふじみ野に行くのは、3回めだった。はじめて訪れたのは、市をあげて開催されたとても素敵なお祭り、2回めはボランティア活動でのインタビュー訪問、そして、今回だ。いずれも、いい思い出しかない。


グランドは土、少し肌寒く、小雨も降ったり、やんだり。ONEPACKのメンバーも、対戦相手のB'ALUMNIも、グランド脇のスペースで入念に試合前の確認をしていた。小雨をしのぐテントに潜り込んで待っていると、ほどなく雨はやんでくれた。僕はコート横に設置された小さな簡易スタンドにあがり、キックオフを待った。


近い。東京ドームとは段違いに近い。そして、これが普通の環境なのだ。東京ドームは、昨年、ONEPACKがこのようなグランドで勝ち抜いてたどり着いた夢舞台であり、普通ではないのだ。僕が中高の部活で試合をしていたようなグランドが、タッチフットの日常。それを僕は見に来たわけで、これこそ、僕が一番応援に駆けつけたい現場だった。


キックオフ。スタンドから観戦した東京ドームと違って、動きがよくわかる。幸運なことに、隣にタッチフット経験者のMさんがついてくれて、ひとつ一つのプレイやルールについて、的確に解説をしてくれた。おもしろい。奥深い。

試合はあっという間に進み、第2、3Qでタッチダウンを畳み掛けたONEPACKが45-7でB'ALUMNIを下した。これでONEPACKは秋の予選リーグを3勝0敗、関東1位で12/22の横浜スタジアムで開催される社会人女王を決定する「ファイナルタッチ」への出場を決めた。ファイナルタッチを勝ち抜けば、もう一度、あの夢舞台、東京ドームのさくらボウルに進出できる。その切符をかけて横浜スタジアムで戦う。それ自体、すごいことだ。おめでとう。


僕は社会人チームでサッカーを続け、両膝の限界によって35歳で現役を引退した。スポーツは、続けたい気持ちだけではどうにもならない。続けられるための心身のケアも、社会人としての生活との両立も、容易ではない。チームスポーツとなると、自分一人ではなく、ともに戦うメンバーも必要で、対戦相手となるチームも、審判やマッチメイクや各種運営をするための基盤も人手も必要。サッカーのようなメジャースポーツでも大変なのに、競技人口が少ないタッチフットは、どれだけの困難があるのか、少し気が遠くなった。


それでもなお「タッチフットをやりたい」と情熱を燃やし、日本一を目指して戦う選手たちは、美しい。スポーツは、それ自体目的なんだ。「やりたい」以外の理由なんていらない。ただ、それだけでいい。そういう純粋なものを、僕は応援していきたいし、僕自身、歌っていきたい。


第7回

2018/05/19 Our Voice Our Turn Japan 〜僕らの声を届けよう〜 @ファーストプレイス東京


今回の「会いに行く」は、第4回の「つながれ〜るスペシャル」と第5回の「ACHAプロジェクト」で会いに行った若者たちによる、社会的養護に関する当事者の声を広く届けて行くプロジェクトの1周年イベントだ。

「社会的養護」は、世の中一般にはまだまだ知られていない。何らかの理由で親と暮らすことのできない子どもたち(多くが虐待やネグレクト等)を保護し、社会として養育していく支援の枠組みのことであり、その生活の場として、児童養護施設や里親家庭などがある。施設や里親家庭で暮らす子どもたちは、体や心に様々な傷を負い、親に頼れないという大きな社会的ハンディキャップを背負いながら、施設職員や里親、行政やボランティア等の支援を受けながら成長し、やがて、社会に出る。

社会的養護は、基本的に18歳までが支援の対象であり、一般的に言えば、高校卒業後は自立して衣食住を賄うことが求められる。22歳までの自立支援事業や、大学・専門学校等への進学支援の奨学金の拡充等、行政上の支援の制度の拡充や、各種NPO・ボランティア団体の活動の広がり等もあるが、実態として、一般家庭で育った若者たちと、社会的養護のもとで育った若者たちでは、様々な点で大きな格差が存在している。

Our Voice Our Turn Japan」は、カナダのアドボカシーオフィスが起こしたムーブメント「Our Voice Our Turn」をモデルに、社会的養護のもとで育った当事者の若者たちが立ち上げたプロジェクトだ。2017年5月20日に発足し、今回が1周年の活動報告イベントだった。彼らは当事者である自分たちのことを「ユース」と呼ぶ。今回のイベントに向けて、ユースたちはクラウドファウンディングを行い、児童養護施設や里親家庭から巣立った若者たちの「声」を集めた冊子を作成・配布した。


「アパートや携帯の契約に、保証人がいない」
「学校に行きながら稼ぐのがつらい。休めない」
「つらいときに相談できる相手がいない。施設の職員ももう退職していない」


「孤立」という言葉が、非常に重くのしかかっている。それが痛いほど伝わってくる。その上で、ユースたちは、批判をするために集まったわけじゃない、と話す。


「『施設出身だから』と言っていたら何も変わらない」
「自分たちが変わって、動いて、社会を変えていくんだ」


そう話す20歳前後の若者たちの姿は、本当に眩しい。イベントの企画・運営・進行・コンテンツもすべて自分たちで用意し、120人を超える大人たちを迎え入れた。裏方でスタッフをやっている支援者の大人たちも、本当に暖かい目でユースたちを見守っている。

活動報告、パネルディスカッション、ダンス・歌・振袖ランウェイ等のパフォーマンスを受け、最後は参加者全員でのグループディスカッションを行い、3時間超のイベントはあっという間に終演した。終演後も、集まった支援者の大人たちが、交流を続けている。みんな、社会的養護の子どもたちのために、何ができるのか、一生懸命なのだ。


僕自身、声と言葉の力を信じて活動している歌うたいだ。ユースたちの声は、必ず届くと信じている。そのためにできることを、僕自身、一緒に考え、行動していく。


※「僕らの声冊子」は、こちらからご購入いただけます。ワンコインからの支援をどうぞよろしくお願いします。


第6回

2018/03/18 HAPPY DAY TOKYO 2018 @芝公園


例年よりも早く桜が開花した東京のど真ん中で、今年もHAPPY DAY TOKYOの野外ステージで歌わせていただいた。

HAPPY DAY TOKYOは、2012年に国連が定めた3月20日の国際幸福デーを広めることを目的として、2013年から6年連続で開催されている。コンサート、イベント、アート、食などさまざまなコンテンツを通じて、出展者やアーティスト、そして来場者が一緒になっていろんな幸せのカタチを体験し、対話や交流をすることで、たくさんの幸せをつなげていく終日型のイベントだ。例年、日比谷公園での開催だったが、今年は会場の関係で都立芝公園4号広場で開催された。


昼の野外のライブ、というのは、あまり多く経験していないが、光や風が、気持ちいい。リハの時間もなく、短時間でのセッティングが求められるため、コーラスエフェクトは外して、限りなくシンプルなセッティングで臨んだ。

前の出演者は、40人を超えるゴスペルグループだった。老若男女入り混じって、音楽を楽しむ皆さんの姿を見ていて、心が温まった。僕はひとりだけれど、僕らしい歌を歌おう。ステージに上がると、イベントを楽しむいろんな人たちの姿が目に入った。今日も応援に来てくれたファンのみんな、初めて会う人たち、自分たちの出展ブースで一生懸命に活動している人たち。振り返ると、東京タワー。


野外ライブといえば、の「追い風、向かい風」でスタートして、「君が好き」「叶える」「タッチ&ラン」の4曲を歌った。

その後もステージでは様々なアーティストのパフォーマンスが続き、グランドフィナーレでは運営スタッフ、出演者勢揃いでステージにあがり、「上を向いて歩こう」を、手話を使いながら、みんなで歌った。


人には歌だけじゃなくていろんな表現ができて、人によって表現したいいろんな思いがあって、それらが一つに集まって共鳴・反響しあうことで、いろんなものが生まれるような気がする。

今日、ここにいたことが、きっと次の何かにつながっていく。

いつ、何につながっていくのか、全然見えていないけれど、きっとそうなる気がする。


春が、今年もまた、やってきた。


【セットリスト】

  1. 追い風、向かい風
  2. 君が好き
  3. 叶える
  4. タッチ&ラン

Report by ヤマカワタカヒロ

Photo by あやや&おちえ


第5回

2018/03/03 ACHAプロジェクト写真展&活動報告会 @星美ホーム


北赤羽駅を降りると、懐かしい匂いがした。地元とよく似た空気感だったのか、季節の変わり目だからだったのか。いずれにしても、春の到来を決定づけるような陽射しを浴びながら、僕は坂道を登っていった。


小高い丘の、子どもたちが楽しそうにはしゃぐ公園の向かいに、児童養護施設・星美ホームはあった。ホームの敷地内からも、子どもたちの楽しそうな声が聞こえてくる。僕はここに、ACHAプロジェクトの写真展を見に、活動報告会を聴きに、会いにきたのだ。「会いに行く」活動の第1回、2017年10月のあの台風の八王子で出会った山本昌子という人物に。


ACHAプロジェクトは、児童養護施設出身者に成人式の振袖/袴姿での写真撮影を贈っている団体だ。振袖/袴の貸出、着付け、メイク・ヘアメイク、前撮り・後撮りまで、ひとりひとりの希望に寄り添って、支援活動を行っている。代表の山本昌子さんが2016年3月に立ち上げてから2年。これまで21名の支援を行ってきた。最近では、成人式だけでなく、七五三やウェディングの写真撮影の支援も始めているそうだ。写真展・活動報告会の会場となった星美ホームの多目的ホール「サローネ」は、プロジェクトスタッフによる手作りの飾り付けと温かい対応で、僕を迎えてくれた。


写真展。

振袖姿、袴姿の新成人たち。20歳の時に振袖を着ることができずに、後からこの活動を知って撮影をした人もいる。どの写真も、本当にきれいだ。そして、心が揺さぶられる。それらは、アート写真ではない。写真館のような記念写真でもない。家族や友達が撮るような思い出写真でもない。「贈りもの」なのだ。僕にはそれ以外にふさわしい表現が見つからないのだが、そう感じた答えのようなものを、後の活動報告会で、昌子さんが話してくれた。

写真以外にも、ACHAプロジェクトが取り上げられた数々の新聞記事のスクラップ、児童養護施設・里親・養親のもとで育ち巣立った当事者のインタビューサイト「そだちとすだち」の記事ボードなど、社会的養護を取り巻く実態と課題を当事者の言葉で感じ、今の自分にできることは何か、向き合って考えることのできる空間になっていた。


時間となり、活動報告会が始まった。

スクリーンにプロジェクトの2年間の活動のあゆみがムービーで流れる。バックミュージックには、児童養護施設出身の3兄弟によるヴォーカルグループ「YANO BROTHERS」の楽曲も流れている。プロジェクトメンバーだけでなく、他のNPOやボランティア、当事者たちとのつながりで、ACHAプロジェクトの活動が成り立っているのだと、深く理解する。


ムービーの中でも、その後の挨拶、活動報告の中でも、これらの言葉が繰り返し発せられる。

「あなたは大切な存在」

「生まれてきてくれて、ありがとう」

「出逢ってくれて、ありがとう」


なんと美しい言葉なんだろう。表現自体はめずらしくないし、文字だけで見れば、使い古されたブランドキャッチコピーと言われても違和感はない。けれども、山本昌子という人物から語られることで、これらの言葉が、圧倒的な存在感と、特別な意味を持つ。少なくとも、僕にはこの言葉を「特別な意味」として語ることは難しい。


山本昌子さんは、生後4ヶ月で乳児院に預けられ、2歳から18歳までは児童養護施設で育った。施設を出て、生きることに希望を持てなかったこと、一般家庭で育った周りの友人たちと自分の状況を比較して苦しくなったこと、成人式に行きたいけど「興味がないから行かない」と意地を張ったこと、しかし、その後、自分を支援してくれる先輩が振袖姿での写真撮影の費用を全額負担してくれたこと、その先輩から「自分は大切な存在だと思って生きること」を教えられたこと、プロジェクト名の「ACHA」はその先輩のニックネームであること。

「ACHAプロジェクト」を立ち上げた背景を、彼女はそのように語ってくれた。


前述した「贈りもの」としての想いを、彼女はこう語っている。

「施設では共同生活だから、施設出身者は集団になりがち。この撮影では、ひとりでの撮影を大切にしている。その子にとっての特別な時間を贈りたい。だから、ひとりひとりの希望を聞いて、個別に時間をかけて撮影している。もちろん、お世話になった職員さんや同じ施設の友達との写真もしっかり撮りますけど」


ACHAプロジェクトの支援は、効率がいいとは言えない。撮影にかける時間も、手間も、非常に多くかかっている。ひとりひとり、事前の打ち合わせから、事後のフォローまで。撮影した写真データは、これでもかという枚数を、撮影後に渡すそうだ。おかげでデータ容量が半端ないらしい。効率なんてものは、ACHAプロジェクトの活動にとっては、二の次三の次で良いのだと思う。だって「贈りもの」に効率なんて、表立って考えるべきことじゃない。


報告会は進み、支援を受けた当事者の女性が昌子さんのインタビューを受ける。

その女性は、施設出身であることに負い目を多少なりとも感じており、振袖を着れなければ成人式はいかないと決めていたそうだ。そして、たまたまACHAプロジェクトをの存在を知り、支援を受け、成人式に出席することができた。

「施設出身だから」「育ってきた環境が普通の家と違うから」と言われることがあるそうだ。彼女は「自分を育ててくれた職員や、同じ環境で育ってきたみんなを否定されたように感じる」と語った。昌子さんへの感謝の想いを笑顔で語る中、その言葉を発する時の彼女のこわばった表情には、やり場のない怒りと悔しさが滲んでいた。


続いて、この場に来れなかった「支援を受けた人たち」からの手紙が代読された。

「施設にいるときは、自立することに必死だった。卒業したら、生活することに必死だった。成人式で振袖を着ることなんて考えもしなかった。ACHAプロジェクトに出会わなければ、振袖を着ることなんて考えられなかった」

「お世話になった施設の職員さんたちに晴れ姿を見せることができて、一緒に写真を撮ることができて、施設を退所する寂しさが減った。思い出の写真がとれた。こんなに支えてくれる人がいるんだと知った」

「成人式は興味ない、と嘘をついていた。本当は振袖を着たかった。結婚式も挙げていない。ACHAプロジェクトでウェディングの写真をとってもらうことができた」


代読が、終わらない。手書きの便箋の手紙の束が多いのだ。2年間で21人の支援をしてきた、というが、全員が感謝の手紙を送ってきたのだろうか。


手紙の内容に共通することがあった。他の子たちにも、ACHAプロジェクトの支援を受けさせてあげたい、広めて行きたい、という想い。そして、多くの人たちが、SNSや新聞記事で見つけてACHAプロジェクトを知り、初対面で支援を受けたということ。初対面なのに、昔から自分のことを知ってくれているかのように代表・スタッフの人たちが、ひとりひとり丁寧に希望を聞いてくれ、叶えてくれたことへの感謝が、とうとうと綴られている。

「ありがとう」という言葉を、この1時間で何回耳にしただろう。


ボランティアスタッフ(撮影/着付け)からのメッセージ、今回の会場を提供した星美ホーム(多くの卒業生がACHAプロジェクトの支援を受けている)の職員の方からのメッセージを受けて、代表として昌子さんが報告会を締めた。


会の進行も、話も、インタビューのやりとりも、決して上手ではなかった。むしろ、代表自ら詫びていた通り、たどたどしい印象を受けた。しかし、そんなことはどうでもよかった。会場からの温かい拍手が、会の価値を証明していた。そして、僕自身が、心から感動していた。


ACHAプロジェクトの想いと活動は、間違いなく本物だ。

このプロジェクトに関わっている大人たちは、自分たちのことを、実際よりもよく見せようとなんかこれっぽっちも思っていない。ただただ、心の美しい大人たちが、児童養護施設出身の若者たちのために、自分たちができること、やるべきと信じていることを、一点の曇りもなく、一生懸命にやっている。その姿が、ただただ、美しかったし、だからこそ、写真展の一点一点の写真が「贈りもの」だと感じたのだ。


実は、10月に初めて会った日に、僕の中で浮かんでいたことがある。

僕はきっと、この出会いから曲を書くことになるだろう、と。

そして今日、予感は確信に変わった。

近い将来、僕は今日感じたことを歌うことになる。

タイトルはもう、決まっている。


『ポートレイト』


音と言葉が降りてくる瞬間を、僕は、心待ちにしている。


Report & Photo by ヤマカワタカヒロ


第4回

2018/02/12 つながれ〜るスペシャル @サンピアンかわさき


2/10のワンマンライブから2日後、ヤマカワタカヒロがつながりと想いを届けに、会いに行く。

第4弾は一般社団法人Masterpieceの菊池真梨香さん、MIX-JUICEの志水柚木さんにお声がけいただいた「つながれ〜るスペシャル」へのゲスト出演。

「つながれ〜る」とは、MIX-JUICEの志水さんが開催している、児童養護施設等の子どもたちと、施設等を退所した若者たちを支援するために、支援者と子どもたち・若者たち、支援者同士、そして子供たち・若者たち同士が「つながる」ためのイベントだ。

今回は、Masterpieceのアドボカシー活動である「Our Voice Our Turn JAPAN」とのコラボにより、拡大版イベント「つながれ〜るスペシャル」として開催され、60人を超える参加者で会場は満員御礼となった。企画を担当した志水さん自身が、たくさんのつながりに救われており、それに感謝するとともに、自分だけではなく皆にも人と人とのつながりを大切にしていってほしいという想いを語っている。そして、その想いが、たくさんのつながりを確かに生み出している。


ヤマカワタカヒロと菊池さん・志水さんとの出会いは、初回の「会いに行く」で訪問した、こども福祉協会B-power主催の「みんなの文化祭」だった。八王子第一小学校の体育館ステージで歌った「叶える」を、「つながれ〜る」でも歌ってほしいと、リクエストをいただいた。

イベントは、参加者同士の交流を大切にしながら、講演やクイズなど楽しみながら社会的養護の実情と課題について皆で知り、理解を深めながら、温かく和やかな空気感で進行していった。

そして、イベント後半、同じくゲスト出演をした陳万里さんのダンスが会場を魅了する。

児童養護施設出身で高校卒業後に就職し、正社員として勤務しながら生活費と学費を自分で払いながら大学にも通っている彼は、さらに、ダンス活動にも精力的に取り組み、これまでに数々のイベントへの出演や、ダンスバトルでの受賞経験も持っている。

そんな、陳万里という施設出身のダンサーの姿は、本当に眩しかった。

盛り上がり、感動し、熱を帯びた会場に、引き続き、ヤマカワタカヒロが登壇する。

ヤマカワはまず、なぜこの場に自分が立っているのかを語った。


「児童養護施設出身の若者たちの進学支援のための奨学金プログラム『カナエール』にボランティアとして参加し、夢や将来、自分と向き合っている奨学生の子どもたちの姿を見て『俺もやっぱり本気で歌をうたわなきゃいけない』と、どこかに置いたままだった気持ちを取り戻した」

ヤマカワタカヒロが、自身を「シンガーソングライター」と正式に名乗るきっかけになったエピソードだ。

歌い始めたのは、そのカナエールに参加した子どもたちの想いを受けて書き下ろされた「叶える」。

参加者たちは、ヤマカワの姿に熱いまなざしを向け、「叶える」という歌に込められた想い、ヤマカワの口から発せられる詞を逃さぬように、真剣に聴き入っていた。


「この歌を日比谷野外音楽堂でみんなと歌うと約束したんです」


想いを言葉にすると、道が拓ける。

夢への道を一歩ずつ耕して行く努力をヤマカワは惜しまない。それは、一人で何かを成し遂げることは難しくとも、みんなと一緒にやれば夢は実現すると、強く信じているから。

ヤマカワの夢を聞いた者は皆、証人となり、一緒に夢を創り上げる伴走者となる。彼を応援してるこれまでの仲間だけでなく、今日初めてヤマカワと出会った人もそうだ。

夢をただ応援してほしいのではなく、皆と一緒に、顔を見合いながら夢を叶えたい。


「『がんばってる 君が好き』という歌だけど、がんばろうともがきながら、思うようにがんばれなくて苦しんでいる人、のことも好きなんだよ。だって、そういう人こそがんばっているんだから。だから、この歌を届けたい」

ストレートなヤマカワの想いに応えるかのように、自然と手拍子が生まれた。

会場に「君が好き」が響き渡る。

夢を伝えたヤマカワの笑顔が眩しく、会場も和やかな笑顔に包まれた。


今回のイベントの司会者は、こども福祉協会B-power代表の菅優子さんだ。ヤマカワタカヒロと菅優子さんとの出会いはカナエールだった。そして菅さんとのつながりが、菊池さん・志水さんとのつながりを生んだ。

イベントのバックヤードで、ヤマカワと菅さんはこの日もワクワクする相談をしていた。下北沢・日吉に加えて、また新しい、今後のヤマカワの活動拠点ができそうだ。


つながりがつながりを広げ、何かを成し遂げたい皆の夢と夢をつなげ、社会を変えていく。

それぞれの夢が叶うとき、皆の夢が実現する。そんな未来を感じられた空間だった。


偶然の出会いは必然となり、ヤマカワはこれからも運命の道を切り拓いて行く。


【セットリスト】

  1. 叶える
  2. 君が好き

Report by おちえ

Photo by つながれ〜るスペシャル事務局の皆様


第3回

2017/12/10 こども福祉協会B-power みんなの音楽祭~X‘masパーティー~@国立リバプール


ヤマカワタカヒロの「会いに行く」第3弾は、第1回と同じくこども福祉協会B-power主催の「みんなの音楽祭~X‘masパーティー~」。児童養護施設の子供たちとたくさんの人々との出会いが子供の笑顔と夢を叶える、という趣旨のもと、前回に続き代表の菅優子さんよりお声がけいただいた。


司会の優子さんから紹介され、ステージに上がるとすぐに「やまちゃーん!」コールが届く。前回の「みんなの文化祭」でLIVEを見てくれた人、今日初めてお会いする方からの応援の声に嬉しい表情が隠せない。両腕を大きく広げ、「みんなのために会いに来たよ、僕も仲間に入れてもらいたい」という想いが、そんな優しい表情を作っていく。


「みんなで踊ろう」の掛け声から1曲目がスタート。オレンジの照明が会場の雰囲気を反射しているかのよう。手拍子に合わせて踊るように弾けるひとつひとつのギターの音が、初めて彼の音楽に触れる人たちの心に優しく響く。


MCを挟み「ヤマカワタカヒロは何者か」を伝え、ここでも飛び交うやまちゃんコール。


2曲目は先ほどと雰囲気が変わり、歌詞の意味を聞きこぼさないようにという静かな息遣いが聞こえてきそうなほど、会場全体の視線が彼に向けられる。

そんな想いを背負って、みんなの夢を背負って、音で、心全体で応えていく。言葉を交わさなくても確かに繋がるモノがここにはあると、まるでステージと客席の気持ちが行き交うかのように見えた。


普段、夜のライブハウスで歌っている彼とは全く違う表情をしていたことに驚いた。それは確かにどちらも「ヤマカワタカヒロ」ではあるが、でも何かが違う。

いつもは、ライブハウスに足を運んでもらっているという重み、「こんな自分を表現したい」という想いが交差する夜のヤマカワタカヒロ。今日はまるで小さな子供のように無邪気で純粋で素直で、心からやりたいことを届けに行くんだという、「会いに行く」ヤマカワタカヒロ。

私はこの2人のヤマカワタカヒロが持つそれぞれ魅力を知ってしまったのかもしれない。

それは彼のこれからの可能性と期待を、この手のひらに乗せて確かめられそうな、特別で不思議な時間だった。心から溢れ出る笑顔が放つチカラを、あなたは見たことがあるだろうか。

LIVEを終え、会場を後にするとき、小さな男の子が手を振り柔らかい声で「やまちゃん」と呼ぶ。

その声に応える彼の表情を、私は忘れない。


そう、これが本物だ。


届けにきた想いと、みんなの想いを重ね、それをまた受け取って彼の「会いに行く」は続く。

純粋で無邪気に笑う「会いに行く」ヤマカワタカヒロに、私はまた、逢いに行きたい。


<セットリスト>

  1. Michelle
  2. 叶える


<こども福祉協会B-power>

https://ameblo.jp/yangelfyangelf/theme-10095919959.html


Report by めいり

Photo by ヤーテツ


第2回

2017/11/11 Social Salon vol.18 〜児童養護から考える未来〜


ヤマカワタカヒロの会いに行く第2回は、社会課題を自分ゴトとして知り、対話を通じてよりよい未来を創るための一歩を考える「Social Salon」へのゲスト参加。

児童養護の現状と課題について、当事者と支援者のそれぞれの視点からinputし、参加者それぞれの立場から感じたこと・想うことを対話することで、児童養護の問題について複数グループに分かれ、参加者全員で考えました。

グループそれぞれからの対話内容の後、ゲストアーティストとして児童養護に関する想いと「おいで、ここに。」「叶える」の2曲を歌わせていただきました。

困難を抱えながら明日を描く子どもたちの未来のために、自分に何ができるかを一生懸命に考える大人たちがこんなにいる、ということを、心強く、嬉しく、思う夜でした。


【セットリスト】

  1. おいで、ここに。
  2. 叶える

第1回

2017/10/29 こども福祉協会B-power「みんなの文化祭」@八王子市立第一小学校 体育館


 ヤマカワタカヒロの「会いに行く」記念すべき第一弾は、こども福祉協会B-power主催の「みんなの文化祭」。児童養護施設の子どもたちとの出会いを楽しもう、という趣旨のもと、代表である菅優子さんの想いに共感した多くの方々が集まる手作りの文化祭に出演させていただきました。

 台風接近に伴う悪天候の中、菅さんの想いに共感した方々が続々と来場する。会場には、フリーマーケットや占い・手相鑑定、写真館、地元野菜の販売、子どもたちに大人気のバルーンアートなど、菅さんからの来場者の方々への「児童養護についてみんなで知ってほしい」という熱いメッセージを受けて、体育館のステージに登場したヤマカワタカヒロ。

 児童養護について知ったきっかけ、人に歌を届ける活動を再開したきっかけと、今後の夢について語りながら、「ストーリー」と「叶える」を熱唱。

 当初2曲の持ち時間だったが、アンコールを受け、「君が好き」で会場に集まった、がんばっている大人たちにエールを送った。


<セットリスト>

  1. ストーリー
  2. 叶える
  3. 君が好き(encore)


<こども福祉協会B-power>

https://ameblo.jp/yangelfyangelf/theme-10095919959.html